アンラッキー・デイズ
『アンラッキーな日々はラッキーな日を創る大きな前ふりである』(J.B.キング)
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DATE: 2010/11/30(火)   CATEGORY: 日記
『ネコ騙し辞典~ち:地球』
その星は『ちきゅう』と呼ばれているようだ。
まだ出来て間もないその星は、おおよそ青い。その色合いは見たこともない、何にも例えようもない青さだ。私たちの血の色に似てはいるが、また違う鮮やかさを放つ。
仲間が上空から見てきた話によると、その星では生命が生存し、文化も発展しているという。人間、あるいは人、と呼ばれる二足歩行の生き物達がその地球を支配している。正確には支配していると思い込んでいる。本当に支配しているのは、目に見えない光なのだが、一部の人間達にしかそれは理解されていない。
星の青い部分は海と言い、その中に浮かびあがる茶色いシミのような部分を陸と言う。ひとまずその陸の三日月型をした場所に降り立ってみるとする……。



ある夜、路上での生活も幾分慣れてきたなとしみじみ思ってワンカップを浴びるようにかっ食らっていると、空から光が降ってきた。光に包まれた円盤と言った方が正しいか。年末ジャンボが当たるという夢からは先ほど覚めたはずたが、なんなのだろう。この公園にできた新しい遊具かアトラクションかと思ったが、何気に精巧にできている。ドラマか映画の撮影でもやっているのかとも思い周りを見渡した。だが人っこ一人周りにはいない。ドッキリか……? そんな事を考えながらキョロキョロしていると突然その中から何か出てきた。ドアが開くとか窓が開くという感じではなくスーッとすり抜けてくる。その『何か』はうっすら透明感のある丸い玉で、今でいうバランスボールぐらいのサイズだ。ただ、普通のバランスボールと違ったのは、透けて見えるだけでなく、ぼんやり目と口があり、私を見つめ、有り得ない事に話しかけてきた。
「ここがちきゅうですか?」
どないやねん……? 色んな思いが脳裏をよぎる。



三日月型の陸の、ちょっとした広場に降り立つと、こちらを凝視する人間とばったり出くわした。その人間は斬新な布を身にまとい、顔が所々黒い。戦いの後なのか、布は破れ破れ、頭から黒い糸が大量に垂らされている。右手に持つ透明の器には透明の液体が入っている。あれは何なのだろう。この島にある空気は無臭であると聞いていたが、なんとなく変な匂いがたち込める。この発酵したような匂いは目の前に立つこの人間から発せられているようだ。ちょうど良い、チャンネルを合わせこの星の言葉で話しかけてみるとしよう。
「ここはちきゅうですか?」
……。5秒待っても返事がなく、その人間の目の中の黒い部分が大きさを変えるのみであった。
「わたしはとおいばしょからきました。あなたはにんげんですか?」
そう聞いた瞬間、目の前の人間はこう口を開いた
「……やまだ……」
どういう意味だろう、やまだとは。瞬時に脳内のリストと照らし、調べ上げる。うん。山田とは、どうやらこの人間達の呼び名のようだ。他には田中、鈴木、伊集院、叶美香、等。なるほど。私を山田という者と勘違いしているのか。であれば、なるべく愛想を良くフレンドリーに近づいてみるか。握手やハグなども効果的、か。なるほど。こうして私は目の前の山田に近づいた。その途端、彼は手に持った透明の堅い器を投げつけてきた。その器の中の液体が私にかかる。その時私は痛みを感じた。フワフワと煙が上がり、シュワシュワと体が溶け出した。やばい。敵だ。瞬時に私は形態を真っ直ぐなるものに変形し、すぱっと山田を切り裂いた。すぱ。目の前には山田の上側と下側がならんだ。だが、私の体は、山田の液体により、不自由な感じになった。茶褐色に色づきだす体。元に戻らねば。だが、動きが、にぶ、り…、私、は、うごか、な、く、なっ、た……。




目の前のバランスボールについた口が動き出した。
「わたしはとおいばしょからきました。あなたはにんげんですか?」
うえぇ……。何なんだ?こいつは。話しだしたよ。「人間ですか?」と聞いたこいつが人間ではない。これはこの世の物ではない。そうに決まっている。ああ。ついにアルコールで脳みそが溶けだしたか? とにかく怖い。近づいてくる。どうする?
「……じゃまだ……」
聞こえただろうか。精一杯威圧的な感じで脅しをかける。一瞬、相手の動きが止まる。このままどこかへ行ってくれれば良いのだが。
が、その透明なバランスボールは、こちらに近づく。やられる。そう思った瞬間、持っているカップ酒を投げつけた。中の日本酒がそいつにかかった瞬間、シュワシュワと音を立てながら溶け出した。あわわわ。 なんだこれは!! と思った矢先、バランスボールは大きな中華包丁のような形に変形し、私を切った……。

気がつくと、私は半分で、目の前に下半身が横たわる。まだ意識がある。でも、血が出すぎだ。もうすぐ死ぬのかも。なんなんだ。こんな所で死ぬのかしらん? 多分もう時間がない。悔しい。路上での生活から這い上がりたかった。人生のリスタートをしたかった。とにもかくにも、あともう少し生きたかった。様々な後悔がこみ上げる。こんなにもやり残した事があった。こんなに生きる気力が残されていたのかと、自分でも驚く。私は下半身を押しのけ、手の力のみで自分の上半身を移動させバランスボールに近づく。バランスボールは中華包丁から丸い形に姿を戻してはいるが、もはや透明ではなく茶褐色に色を変えている。私は人差し指でそれに触れてみる。何が起きているのはわからないが、砂場に文字を書くようになぞると、触れた部分はへこみ、窪んだ状態を保ち続ける。
曇りガラスにメッセージを書くように、私はバランスボールに人差し指でメッセージを書いた。その言葉が今思う唯一の感情だった。ただ、もう血が流れすぎたのだろう、意識が薄れる。あぁ、この言葉が何気にダイイングメッセージじゃん。まぁいい。あぁへそから下が痛い。というか、へそから下が無い。血が出過ぎだろう。あぁ。あぁ。などと思いながら、私は全ての動きを止めた……。

































と、いう意味を込めて作りました!! どうぞご覧ください!!
意気揚々とその工芸作家が作品を発表した。

































RIMG0347_convert_20101130193442.jpg


































このオブジェにそんな意味が込められているとは、誰も知る由はない。

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DATE: 2010/11/15(月)   CATEGORY: 日記
『ネコ騙し辞典~た:タクシー』
その日は仕事も24時を周り、終電はもうとっくに無くなっていた。自宅まで歩いて帰るにはとてつもなく躊躇う距離で、そんな夜私はタクシーを拾う。
アドレス帳に登録されているタクシー会社に電話をかけると、なかなか繋がらず、10コールくらいでようやく途切れ、気だるい中年男性風の声が聞こえた。
「はい!ニシナガ様ですね」
やけにテンションが高いのは無視するとして、番号が既に登録されているのか、中年はこちらから名乗らずとも名前が分かっていた。「違います」と言うのも不自然過ぎ、そのまま今いる場所を告げる。「はいはい!すぐ向かわせます」とハイテンションで言う中年の言葉を信じて、しばし晩秋の寒空の中、煙草を喰わえる。
不規則な動きをする煙を追いかけながらふと周りを見渡すと、少し後ろの方で何かを待つ小太りの男がいた。こんな夜中に何をしているのか、気にはなるがこれといって関わるのもどうかと思い、煙草をもみ消し携帯をいじる。
その小太りの男は見た目はまだ若そうで、茶髪は綺麗にセットされている。目が細く、ホンジャマカの太っている方をお洒落にしたような雰囲気を醸し出していた。彼もまた終電を逃したのか、ただ一人、そこに、いる。タクシーでも待っているのか、あたりをキョロキョロと見渡している。車の通りもまばらなこの場所で何をしているのだろう?ふとした疑問が頭の中をよぎる。
携帯をしまい、話しかけるなオーラを全開にだしてみる。簡単だ。「話しかけるな」と心でエンドレスに念じ続けるのだ。そんな事をしている間に『迎車』と灯された黒塗りのタクシーが来た。タクシーが来たのと同時に雨もやってきた。きっとこのタクシーの運転手は雨男なのだろう。アメオと勝手に命名してやる。
急いで手を上げると、車のヘッドライトが華奢な私を照らしだす。後部座席が目の前の車道に静かに止まり、自動的にドアが開く。
「ニシュナガ様でしゅか?」
「はい」
とにかく、ここから逃げ出したかった。いつもならサ行が苦手っぽい運転手を珍獣でも見つけたかのごとく面白がって観察しているはずなのに、そんな気になんてなれない。なぜならアメオのせいで雨が降り、得体の知れないホンジャマカ風の男に違和感を感じていた。
雨を避けタクシーに乗り込み、ドアが閉まるもんだと思っていると、突然左側から大きな音が聞こえた。ガッ、ドス! 左側を振り向くと、彼が、座って、いた。隣に、あたかも、ツレ感覚で。
アメオは何も気にせず、手慣れた手つきでサイドブレーキを下ろし、アクセルを踏み込み、タクシーを発車させる。
「しぇい」
彼なりの発車の合図なのか、何なのか、気の抜けた声が車内に響いた。
絶句である。
何故か小太りが乗り込んできた。何なんだ? 恐怖を感じて、声を出そうとするも、上擦って思うように出ない。足も震える。車内にはお洒落なホンジャマカとアメオ、で私。何なんだ!
「いつもの所でよろしゅいでしょうか?」
「ああ、助かった」
「しぇい」
どういう事だ? いつもの所とはどこだ? 助かったとは? アメオとホンジャマカは顔見知りなのか? しぇいって何だ?!
いくつもの『?』が頭に浮かび上がる。浮かびあがっては消えていく、煙草の煙のようだ。そういえば先ほどの煙草の煙も見ようによっては『?』の形をしていたのではないか? あの煙はこの事を予言していたのでは? またもやいくつもの『?』が頭に浮かび上がる。めちゃくちゃどうでもいい思惑が、ハムスターが丸いおもちゃで遊ぶかのごとく、私の小さな脳内をかけめぐる。とにかく、このままでは『いつもの所』に連れて行かれてしまう。勇気を出して、声をだすしかないのだ。
「あ、あの、どこに行くんですか?」
そう聞いた。聞いたはずだった。だが、二人とも何の反応もなく前を見つめる。え? 無視? 声出てなかった? 何? 何なんだ?
「あの!」
先ほどの足の震えが嘘のように、急に大きな声が車内に響いた。
「しぇい?!」
アメオが数cm飛び跳ねた。蛙か。
「どこに行くんですか?」
たくさんの『?』の中からもっともな『?』をチョイスした。
「いつもの所でしゅけど?」
バックミラー越しに私を見る目が明後日を向いている。ことごとくアメオが気になる! だがそれは置いといて。
「え? いつもって?」
「ニシュナガ様のご自宅でしゅけど」
一気に血の気が引いた。
この二人が向かっているのは、確実にニシナガ家であった。ということは……。
隣のホンジャマカ風の男は…… 。
さて、どうしよう。降りたい。このままだと私はニシナガ家についてしまう。ニシナガ家。ホンジャマカ風の男とアメオは、ニシナガ家が『いつもの所』なのだ。まずい。非常にまずい。意を決して私はアメオの禿げつつある後頭部に訴えた。
「降ります」
「ふぇ?」
「ここで降ります!」
アメオは、鳩って豆鉄砲くらったらこういう顔なんだろうなって顔をしてながらバックミラーをチラ見する。そのチラ見の顔が面白い。どんなに好奇心をそそる人物なんだアメオ! そんな顔をする人は初めてだ! だがそんな好奇心を打ち消す言葉が、すぐ左から聞こえた。
「僕が送るよ」
そう、ホンジャマカ風の男がツイッターばりに呟く。
「雨もやまないみたいじゃん、どこまで?」
行き先は告げられない。黙ってホンジャマカに視線を向けると、目が合った。
「なんか、ドキドキするな……」
あ、今日、喰われる。そう確信した。と、その時、車内に「もらい泣き」が響き渡る。
「えぇいぃぃやぁぁぁぁきーみーかーらーもらぁいぃなぁきぃ」
携帯から大絶叫する一青さん。アメオがまた数cm飛んだ。天井に頭をぶつけたかどうかは見えなかった。左のホンジャマカ風の男はこの世の終わりの様な顔で私を見ている。
出られない。絶対に携帯に出られない。ポケットの中で壊れるくらい握りしめているが、一青さんは狂ったようにビブラートをきかしている。
「えぇいぃぃやぁぁぁぁきーみーかーらーもらぁいぃなぁきぃ」
こちらも貰い泣きだ。
「お客しゃん?」
今度は私が数cm飛んだ。
「出ないの?」
ホンジャマカが聞く。
「偶然だね。僕と同じ着メロだよ」
そりゃそうだ。あんたの携帯だもん。ニシナガさん。私は、ただ、落ちていた携帯を拾ってかけただけだもん。あんたキョロキョロしてたの、携帯探してたんだろ。そしたらタクシーが来て、それがあんたの常連のタクシー会社で、だからこのアメオも顔見知りなんだろ? お互い、いつもの所でどこでも行けちゃうんだろ。そもそもあんたらにしたら、私が誰なんだ? って事だろう?
ふと気がつくともらい泣きは一段落していた。この携帯、どうしよう。どうしよう。そうだ。窓から投げ捨てよう。そうしよう。私は窓を開けるボタンに指をかけ、押した。急に後ろの窓が開き、ビックリするアメオとホンジャマカ。騒がしい音が車内にも響く。携帯を手のひらサイズにした人ノーベル賞などと考えながら手の中に携帯を隠し、窓の外に手を出す。
そして手を開く。よし! 証拠隠滅!! なんかわかんないけど明日厄払いに行こう、そう思ったと同時にタクシーが止まった。何故だ!
「ニシュナガしゃん、ここで良いでしゅか?」
「ああ、どうも」
どうやら、ここがいつもの所のようだ。最悪だ。そして、窓の外からこのタイミングでもらい泣き。
「えぇいぃぃやぁぁぁぁきーみーかーらーもらぁいぃなぁきぃ」
終わった。もうどうにでもなれぃと思って白目を向いてみたりした。
ふと、ホンジャマカは私の右、窓の外を凝視し、ドアを飛び出した。
「あったぁぁぁ!」
雨の路上に奇跡的に落ちていた携帯。それを拾い上げ大絶叫している彼。まぁ、バレてないならいいけど。安堵の表情で窓越しに話しかけてくるホンジャマカ。
「ほら、着メロ、一緒でしょ?」
「ですね」
彼はアメオにお金を多く持たせ、私の家まで送るように話をしている。
なんて事はない、携帯拾ってかけて、持ち主のもとへ無事返す事ができ、タクシー代ももらえた。それだけの話だ。
「あ、良かったら、連絡先交換しない?」
「運転手さん行ってください」
タクシーは男を一人置いて走り去る。何を勘違いして私にそんな事を。番号交換なんて。
「あ、お嬢しゃん、どこまで行きましゅか?」

「田無!!」

黒い煙を撒き散らしながら、進むタクシーも黒かった。
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